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丘審査委員長の講評
 

 応募作品を読んで、思ったことが二つあります。一つは、いつの時代でも変わらない親の子を思う心情です。殊に命を生み出す母親の思いには、深くて純粋な愛を感じます。その愛こそが、障害を持つ子どもたちの隠れた才能や、埋もれた感情を見出し、彼らのやさしさやまっすぐな思いを感じ取る力になっているのだと思います。
 二つめは、今も変わらない彼らを取り巻く環境の厳しさです。障害のある兄弟を持つ子どもの肩身の狭さや、周りからの偏見に満ちた言動に苦しむ姿は、人権や社会福祉の考えが進んできた現代でも、なおあり続けていることに、悲しみと怒りを感じます。
 『運動会』という作品には、強い兄弟の絆とそれに声援を送る仲間たちや大人たちの姿が描かれていました。運動会のために、「ぼく」は障害のある弟に徒競走の練習をしてやります。でも、弟は本番でとんでもないことをやらかします。みんなと同時にスタートすることもできず、とんでもない方向へ走り出します。あせったぼくは気づいたときには飛び出していました……、兄弟の奮闘とそれを見守る人々の姿は、この子たちの明るい未来を予感させ、私たちに大いなる励ましをあたえてくれます。
 『お母さんと言ってくれた日のこと』という作品は、障害を持った子どものいる家族の、明るく楽しい関わりを描いた作品でした。二人の姉妹は、この子に要求を言葉で表せるようにと、いろいろと楽しいことをしてみせます。そして、ついにある日、それまでいえなかった「お母さん」という言葉を、弟がいうまでのお話です。
 障害のある息子が父親とビールを楽しむまでに成長した姿を頼もしげに見守る『ビール』という作品。子どもの目線や心に沿ってみると、思いもかけない発見をしたという『空』や『ねんど』『先生から聞いた話』なども、心に残りました。また、『お姉ちゃん』という高校生の目から描いた、重い障害のある妹を巡るできごとを語った作品は、作家としての私の創作意欲を刺激するに十分な内容を持つものでした。

 私は日頃、障害者理解のためには、「障害者を題材にした作品を十冊読むより、一人の障害者に出会うこと」の方が大事だと思っています。しかしながら、読書やこうした事実に即したお話に出会うことも、障害者理解の一助になることも確かなことです。
 あーと絵本となった作品が、いろんなところで、いろんな人々によって読まれることを期待します。

丘 修三

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